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2026.01.15

大阪・関西万博会場が熱狂! ライブパフォーマンスが示す 先端技術とウェルビーイングの可能性

2025年5月27日。大阪・関西万博で開催された「メタバース・XR・AIアワード」のプログラムのひとつとして「MetaverseJapanSummit @2025EXPO」(一般社団法人MetaverseJapan主催)が開催された。多様性を解き放つ、クリエイター達のライブパフォーマンス&セッションをテーマに、VRアーティスト せきぐちあいみさんとALSクリエイター武藤将胤さんによるパフォーマンスを実施。トークセッションでは、MetaverseJapan 共同代表理事の長田新子さんと馬渕邦美さんが加わり、議論に花が咲いた。

※本記事は『MetaStep Magazine』に掲載した記事を再掲載したものです。その他の記事は冊子でお読み頂けます。

VRアーティスト
せきぐちあいみさん

VRアーティストとして世界13カ国で活動。ドバイ政府認定アーティスト。和の美意識と最先端技術を融合させた独自の作風で注目され、2021年にはNFT作品が約1,300万円で落札。「Forbes JAPAN 100」にも選出。ライブペインティングや地域ARプロジェクトにも挑み、メタバースやクリエイターエコノミーの発展に尽力している。

ALS クリエイター
武藤 将胤さん

1986年ロサンゼルス生まれ、東京育ち。博報堂を経て26歳でALSを発症し、WITH ALSを設立。視線入力でDJパフォーマンスを行うEYE VDJ MASAとして国内外で活躍し、東京2020パラリンピック開会式などに出演。テクノロジーと創造力で社会課題解決に挑む実業家であり、著書に「KEEP MOVING」がある。

光と音と想像が融合した幻想空間

2025年5月27日、大阪・関西万博のEXPOホール「シャインハット」にて、観客の視線が一斉にステージへと注がれた。MetaverseJapanが主催した「MetaverseJapanSummit@2025EXPO」のプログラムとして行われたのは、VRアーティストせきぐちさんと、クリエイター 武藤さんによる異色のライブパフォーマンスだった。

武藤さんのオリジナル楽曲が響き渡る中、VRゴーグルを装着したせきぐちさんが空間に立体的なアートを描き出していく。その一挙手一投足が、スクリーン上にリアルタイムで映し出され、仮想空間に咲き誇る花々やデジタルオブジェの繊細な動きが観客の視覚を捉えて離さなかった。このパフォーマンスが単なる「技術デモ」に終わらなかった理由は、ふたりの表現に通底する「人間性」へのまなざしにある。せきぐちさんは、技術のすごさを理屈ではなく体験として届けたいという思いを語る。「仮想空間の中で描かれるアートが、時間と感情を伴って心に届くことで、技術が単なる道具ではなく、人と人の心をつなぐ手段になり得るんです」(せきぐちさん)。

一方、武藤さんは視線入力によるDJ プレイという新たな表現領域に挑み続けている。ALSという制約を超えて、視線という「もうひとつの自由」を駆使し、音と映像を自在に操る姿は、まさに人間拡張の可能性を象徴していた。「技術が進化するほど、私たちは『できること』を増やせる。それは希望であり、未来を拓く武器でもある」と語る武藤さん。彼が表現するのは、身体性とテクノロジーの共鳴だった。2人のパフォーマンス後には、会場には言葉にできない余韻が漂っていた。馬渕さんも「奇跡の瞬間に立ち合えた皆様はラッキーです」と語った。そこには確かに、「テクノロジーが人間の可能性を広げる」瞬間が宿っていた。


大阪・関西万博のメイン催事施設のひとつ、EXPOホール(シャインハット)が会場となった

武藤さんが手がけたオリジナル曲のDJにあわせ、3D仮想空間にアートを描くせきぐちさん

メタバースがもたらす日常と変容

最前線で挑戦を続ける2人にとって、XR・メタバースの社会実装をどのように捉えているのか。せきぐちさんは、世界の子どもたちにとってメタバースはすでに日常の一部になりつつあると語る。「Fortniteで遊ぶ若い世代の子どもたちにとっては、メタバースは当たり前の存在ですし、活用の幅も広がっています。例えば高齢者施設でVR体験をしてもらうと、見知らぬ世界へ行けたり、大切な人に会えたりすることで、表情がぱっと変わるんです」(せきぐちさん)。それは単なる娯楽ではなく、ウェルビーイングの新たな形として社会に溶け込んでいる証左だ。

一方、武藤さんは現在の社会実装について「まだ日常生活で使いこなしている人は限られている」と冷静に語る。そのうえで、「アクセシビリティの進化が鍵になる」と明言する。Apple VisionProのように視線入力デバイスが普及しつつあるが、機器やソフトウェアの選択肢は依然として限定的である。武藤さんが長年取り組んできたのは、視線だけでなく、脳波での操作も可能にする研究だ。AIと組み合わせて脳波で選択・操作することで、遠くない将来、アバターを脳波で操るメタバース世界が実現する—— そんな未来像に向けて武藤さんは確実に歩を進めている。

この「拡張の技術」は、テクノロジーの進化だけではない。せきぐちさんは、AIによってメタバースの構築スピードが圧倒的に加速する未来を見据えつつも、「人間にしかできないことを残していくべき」と語る。身体を使って描く、プロセスを見せる、偶然性に身を委ねる—— それらはすべて、人間だからこそ生み出せる価値である。AIとの共創時代においても、「魂を持った表現」が求められるという強い意志が、せきぐちさんの言葉からにじんでいた。

社会実装の鍵は「共感」と「選択肢」

未来のメタバースは、すべての人に開かれた場所でなければならない。武藤さんは「誰もがアクセスできる選択肢を広げることが自分の使命」だと語る。自身がALS当事者であることを強みに変え、誰もが活躍できる世界の実現を追い求める。彼が目指すのは、視線や脳波など多様なインタフェースが用意された「ボーダーレスなメタバース」である。

せきぐちさんもまた、アートの力で国や文化を超えて人々をつなげようとしている。特に注力しているのが、海外の障がいのある子どもたちとの創作活動だ。「現地に行けなくても、メタバース上で一緒に作品を作ることができる。アバターという存在を通じて、偏見や差別の概念すら変えていける」と語る。

「メタバース領域で個人やコミュニティが多様性を尊重しながら自由に活躍する社会を創る」Metaverse Japanの掲げるこのビジョンのもと、最新技術と創造が交わる今回のパフォーマンスから、人間の可能性を信じ、誰一人取り残さない未来への強い願いを感じた。


Metaverse Japan 共同代表理事 長田新子さん、馬渕邦美さんも加わり、「すべての命の輝きを解き放つ先端技術とウェルビーイング」をテーマに議論された

視線入力DJ×XRライブペインティングのコラボライブパフォーマンスは多くの観衆を引き付けた

(写真=山本 尚侍)